コーヒーかす堆肥の作り方 舩越農園 編

農園に学ぶ!コーヒーかすの「使い方」と農家が実践する多様な活用方法

京都の舩越農園でコーヒーかす堆肥を使用して育てられた、収穫直後の鮮やかな「あやほまれ」人参。mame-ecoの再利用プロジェクトによる循環型農業の成果。

mame-eco(マメエコ)のごみ減量への取り組みの一環として、京都市伏見区の舩越農園さん(IG: @funa.osamu)へ定期的にコーヒーかすを提供しています。

舩越農園では、コーヒーかすを「資源」として活用した循環型農業を実践し、減農薬米や多種多様な野菜を栽培されています。コーヒーかすを土に還すことで、作物の成長や土壌改良において、さまざまな変化や手応えを感じておられます。

コーヒーかすを土に還すメリット: 正しく使用することで、窒素などの栄養補給だけでなく、土壌の通気性・排水性・保水性が向上します。また、有益な微生物やミミズを育む豊かな土壌構造(団粒構造)を作る助けにもなります。

今回は、農園はもちろん、家庭菜園や庭づくりでも実践できる「コーヒーかすの具体的な使い道」を舩越さんに詳しくお聞きしました。

堆肥としての活用から、追肥、土壌改良、さらには害虫対策や除草まで。皆様の用途に合わせた「活用術」を見つけるヒントになれば幸いです。

実践者紹介:伏見区・舩越(ふなこし)農園

mame-ecoの活動を力強く支えてくださっているのが、京都市伏見区で農業を営む舩越さんご夫婦です。

コーヒーかすの袋を満載した軽トラックの前に立つ、京都・伏見「船越農園」のご夫妻

舩越農園では2020年から本格的にコーヒーかす堆肥の導入を始めましたが、実はそれ以前から活用を模索されていました。きっかけは、野菜を卸しているレストランのオーナーからの勧め。レタスや枝豆の防虫対策として、土の表面に撒くことからスタートしたそうです。

現在は、試行錯誤を重ねながら多種多様な野菜にコーヒーかすを活用されています。

【コーヒーかす栽培で育つ主な野菜】

  • 果菜類: なす、トマト、万願寺とうがらし、とうもろこし、おくら、かぼちゃ
  • 葉菜類: レタス(各種)、キャベツ、白菜
  • 根菜類: サツマイモ、にんじん
  • 豆類・穀物: 枝豆(茶豆)、お米

① コーヒーかすを「そのまま」土に混ぜ込む方法

サツマイモ栽培予定の休耕地にまかれたコーヒーかす。遠くに建物が見える風景。

この方法は、コーヒーかすを発酵や堆肥化させる手間をかけず、ダイレクトに土壌へ還すシンプルなやり方です。

  • ポイント:栽培開始の「4ヶ月前」に実施する

mame-eco(マメエコ)が提供したコーヒーかすを土壌に撒き、そのまま4ヶ月間放置します。その後、土をすき込み(混ぜ込み)、畝(うね)を立てて準備完了です

京都・伏見の農園で青々と葉を茂らせる、さつまいもの若苗。

【実績:サツマイモとカボチャ】 実際に5月にサツマイモの苗を植え付けたところ、近年の厳しい猛暑の中でも力強く育ち、無事に立派なサツマイモを収穫することができました。

時間に余裕がある場合は,「放置して待つ」というシンプルな工程でも、土に還していく一助となります。サツマイモのほか、カボチャの栽培にも相性が良いようです。

コーヒーかすを肥料に育てられた、土の上に置かれたばかりの収穫したて。

② コーヒーかすを茎元(株元)の土の表面に撒く方法

この方法は、土の中に混ぜ込むのではなく、植物の根元に「マルチング」として敷き詰める活用術です。

  • 主な効果:保湿と虫よけ

土の表面をコーヒーかすで覆うことで、土壌の乾燥を防ぐ「保湿効果」が期待できます。また、コーヒーの香りを活かした「虫よけ」としても利用されています。

⚠️ 大切なポイント:厚塗りに注意! コーヒーかすを厚く敷きすぎると、乾燥した際に表面が固まってしまい(ケーキ化)、逆に水や空気を通しにくくなることがあります。「薄くパラパラと撒く」、あるいは**「土と軽く混ぜ合わせる」**のが、植物を元気に育てるコツです。

黒のビニールマルチに覆われた土から、一列に芽を出した野菜の苗。

③ コーヒーかすを畝(うね)の表面に撒く方法

苗を植える盛り土部分(畝)の表面に撒く活用法です。

  • 主な効果:ナメクジなどの害虫対策・追肥(ついひ)

苗がまだ小さくデリケートな時期、天敵となるのがナメクジなどの害虫です。コーヒーかすを畝の表面に撒くことで、不快な害虫を寄せ付けにくくするバリアとして役立ちます。

また、ゆっくりと分解される過程で「追肥」としての役割も果たし、苗の健やかな成長をサポートします。

💡 ここでも「薄く」が基本! 方法②と同様に、水やりや雨の際に水分がしっかり土へ浸透するよう、表面に薄く均一に広げるのがポイントです。

ナメクジ除けと栄養補給のため、土の表面にコーヒーかすをまいた畝(うね)。新芽を待つ畑の風景。
ナメクジ対策と追肥のため、株元にコーヒーかすをまいた青々とした野菜の苗。

④ コーヒーかすを「発酵堆肥」として利用する方法

コーヒーかすに米ぬかとEM菌を加え、微生物の力で発酵させる本格的な活用術です。

  • 黄金比のレシピ(目安)
    • コーヒーかす: 10リットル
    • 米ぬか: 10リットル
    • EM菌希釈液: 7リットル (ベランダ菜園などで少量仕込む場合も、この比率を参考に調整してください。)

【作り方の手順とポイント】

  1. 混ぜ合わせる: 材料を混ぜ、手でギュッと握った時に「団子状」になる程度の水分量に調整します。
  2. 密閉して発酵: 袋に入れ、空気を抜いて密閉した状態で約1ヶ月間寝かせます。
  3. 成功のサイン: 1ヶ月後、甘酸っぱい香りがしたり、表面に白い菌糸(カビのようなもの)が出ていれば、堆肥化が順調に進んでいる証拠です。

💡 プロのワンポイントアドバイス:

  • 水分が命: コーヒーかすは乾燥していなくても大丈夫です。最終的な「団子の硬さ」を見てEM菌の量を調整してください。
  • 濃度について: 通常は5%程度の希釈水を使いますが、水分量が多い場合は濃度を濃くして調整するのがコツです。

 

堆肥作りのため、一輪車に乗せられたEM菌の容器とコーヒーかす。他の材料と混ぜる前の準備風景。
畑で使う前に、コーヒーかす・EM菌・米ぬかを混ぜて緑のテープで密封し、嫌気発酵させているリサイクル袋。

野菜だけでなく、コーヒーかすをEM菌(善玉菌の集合体)で発酵させた堆肥を水田でも活用しています。

EM菌の働きにより土壌が整い、水田の水質も良好に保たれています。近年の厳しい暑さの中でも稲が健やかに育ち、10月前半には無事に収穫を迎えることができました。

mame-eco公式Instagramのご案内

Instagram(@mame_eco)では、日々の活動や活用のヒントをシェアしています。よろしければフォローいただき、コーヒーかすを資源に変える取り組みを、いっしょに広めていければ幸いです。

収穫間近の、黄金色に実った稲穂が頭を垂れる京都・伏見の田んぼ。

⑤ コーヒーかすを「防草(除草)」として敷き詰める方法

栽培地の周りなど、雑草の繁殖を抑えたい場所にコーヒーかすを敷き詰めて活用する方法です。

  • 使い方の目安:1cm程度の厚さで撒く

コーヒーかすを厚めに(1cm程度)敷き詰めることで、日光を遮り、雑草が生えにくい環境を作ります。農園では、作物を育てている場所以外の通路や境界線などでこの方法を取り入れています。

💡 注意点 この方法は雑草を抑える力が強いため、野菜や花の苗を植える場所には適しません。あくまで「草が生えてほしくない場所」に限定して使用するのがポイントです。


雑草の発生を抑えるため、農園の通路にまかれたコーヒーかす。

上記の方法①〜③では発酵させない状態で使用していますが、農園では受け取ったコーヒーかすをより安定して活用するために、以下の手順で保管・準備を行うこともあります。

  • 保管の手順: 天日干しで乾燥させたコーヒーかすを、肥料などの空き袋(プラスチック袋)に入れ、3ヶ月間ほど密閉状態で保管します。ハウス内、または屋外で雨除けをして置くことで、じっくりと状態を落ち着かせてから使用しています。

【おすすめの活用法】 育てる野菜によって向き不向きはありますが、発酵させて「堆肥」にしたものであれば、ほとんどの作物に安心して使用できます。時間に余裕がある場合は、一度発酵させてから利用することをお勧めします。

コーヒーかすにカビが生えた場合

入手したコーヒーかすは、保管環境や気候によってカビが発生することがあります。

  • 堆肥化する場合: 密閉して他の菌(乳酸菌や酵母など)の発酵が進めば、カビ菌は自然と抑えられます。そのため、そのまま堆肥作りに活用しても問題ありません。
  • 土に使用する場合: カビが生えた状態でも、土に還すことで土壌にもともと存在する微生物が優勢となり、カビは消滅していきます。舩越農園でも、そのままの状態で活用されています。

カビの発生を過度に心配せず、自然なプロセスの一部として向き合うことが、継続的な活用のコツです。

ご使用上の注意点:土壌のバランスについて

コーヒーかすをそのまま(未発酵で)使用する際には、植物の生育に影響を与える可能性があるため、以下の点に注意が必要です。

  • 「窒素飢餓」への注意: コーヒーかすは窒素を含んでいますが、土の中の微生物がそれを分解する過程で、土壌中の窒素を一時的に使い果たしてしまう「窒素飢餓」という現象が起こることがあります。これにより、植物が肥料不足の状態になり、生育が停滞する場合があります。
  • 成長阻害物質の影響: コーヒーには植物の成長を抑える成分が含まれています。これらは、時間をかけてしっかりと堆肥化させることで解消されます。

【より安全に活用するために】 特にデリケートな苗や、短期間で収穫する野菜に使用する場合は、前述の「方法④(発酵堆肥)」のように、一度しっかりと発酵させてから土に戻すことをお勧めします。

コーヒーかす堆肥栽培での効果や特徴

活用事例:千両なすの栽培記録

舩越農園では、コーヒーかすを活用することで「千両なす」の品質にも明確な変化が見られました。

  • 外観の変化: 以前に比べ、皮の紺色がより深く濃くなり、艶(つや)が格段に良くなりました。
  • 収穫期間の延長: 通常よりも長く、安定して収穫を続けることができています。
  • 食味・食感の向上: 調理すると皮が柔らかく、身にとろみが出るのが特徴です。

こうした具体的な成果は、コーヒーかすが土壌環境を整え、作物のポテンシャルを引き出している証と言えます。

じねんと市場で販売されている舩越農園の千両なす。コーヒーかすとバーク堆肥を活用した栽培方法を紹介するポップと一緒に並んでいる様子。

舩越農園さんの野菜が買える場所

コーヒーかすをたっぷり使って育てられた、滋味豊かな野菜をぜひ味わってみてください。

住所:京都府八幡市八幡南山76

じねんと市場

公式サイト / Instagram: @jinentoichiba

住所:京都市伏見区竹田青池町125

旬の駅(八幡市直売所)

公式サイト / Instagram: @syunnoekikyoto

メディア掲載・活動実績

舩越農園さんの取り組みは、行政や専門メディアからも高く評価されています。

WEBマガジン「Moglab(もぐらぼ)」 野菜ソムリエ・頭川展子さんの農家巡りレポートにて、舩越農園さんのこだわりが詳しく紹介されています。

『こごみ日和』第99号(2024年春号) 京都市ごみ減量推進会議が発行する情報誌にて、mame-ecoのコーヒーかすを活用する代表的な農園として紹介されました。

『京都市農委だより』第54号(2023年春号) 京都市農業委員会発行の広報誌「がんばっている農業者」特集にて、コーヒーかす再利用栽培の記事が掲載されました。